40代独身男の回想2
店の外に出ると、ケイスケはまた、10円ゲームをやり始めた。
僕は駄菓子屋の向かいの駐車場に移動して、ぼんやりと店を眺めていた。
店の周りにはゲーム機が数台置いてある他、ガチャガチャも数台置いてあった。中身はウルトラマン消しゴムやスーパーカー消しゴムだった。
消しゴムといっても字は消せない。消すと黒い汚れが紙にも消しゴムにもつくだけだ。
ウルトラマン消しゴムではお菓子の缶や箱の裏を土俵に見立てトントン相撲をして遊んだ。横綱はレッドキングだ。安定感抜群で無類の強さを誇った。カネゴンは前頭筆頭くらいか、ゼットンはテレビではウルトラマンを倒した最強怪獣だが、尻尾が無いので安定感がなくトントン相撲では弱い。ウルトラマンはそもそも自立しないので論外だ。
スーパーカー消しゴムでは廊下をレース場に見立て、ノック式のボールペンで消しゴムをはじいてレースをして遊んだ。1回のノックでできるだけ遠くへ移動できる消しゴムが強い。ただ、ウルトラマン消しゴムのように種類によって強弱の差はあまりなった。しいて言えばポルシェよりもカウンタックやフェラーリの方が車高が低く安定しているので若干有利なくらいか。それよりもノック式ボールペンのバネの強弱の影響が大きかった。
そんなんで、ゲームやガチャガチャの周りにはいつも数人づつのグループがいた。
また、店の前の横の道路は幅が狭く、車が通れないのでそこは子供らの自由空間だった。メンコをしたり、ベーゴマをしたり、道路に蝋石(ろうせき)で絵を描いたりしていた。
だが、今日は店の周りには誰もいなかった。
理由は分かっている。今日は水曜日。今の時間は3時半だ。